今年は夏になっても台風がなかなかできない年、安心なのか不安なのかよくわからないうちに出発です。

出発前の天気予報では、台風や低気圧などには直接当たらないけど、沖縄の南にある見えない低気圧や太平洋高気圧のへりにあたりどうもベタ凪ではない様子。

(結局日に日に予報は変わってゆきました。1日ごとに、予報は低気圧ができ、熱帯低気圧ができ、ついに台風北上とあいなりました)

8月上旬と言えば台風さえ来なければ外洋といえども見事な凪(静かな海)になる確立が高いのですが。

なにはともあれ、鹿児島県串木野港をトカラ列島に向けて出港したのでした。


まずは湯瀬から

串木野港を出港した船は東南東からの強めの風を受けながらも南下します。

そして、今回のダイビングのスタートは

トカラ列島に向かう途中にちょうど良く位置する孤岩、「湯瀬(デン島)」

1本目の足慣らしにしてはなんと贅沢なポイントでしょう。

しかし、東南東の風によりさすがにバシャバシャ状態。

それでも風や波の陰になって静かなエリアは狭いけど無くはない。エントリーもエキジットもピンポイントなら可能かな。

相談の上、潜ることに。

10日ほど前にここ湯瀬に潜ったときにはまさかのニゴニゴ状態。今回はどうでしょう。

飛び込むと前回よりずっとましな透明度(まだまだ本領発揮とは言えませんが)。でも水深を落としてゆくとユラユラのサーモクライン。そこへ名物ギンガメアジの大群が登場。相変わらずの脱兎な奴等ですが何度も我々の眼前を走ってくれます。

イソマグロや大きなツムブリ、のんき(に見える)ツバメウオなどもいました。

エキジットのこともあるのであまり行動範囲は広げずに早めに静かな場所へ戻り、中層に流さず湯瀬本体の岩に掴まり安全停止。

こういう上級向けとされるポイント、今日の荒れ気味のコンディションで潜る以上、なおさらキビシイ思いをさせてたまるか、との策です。

ほとんど波の無いエリアで浮上、船もその意図をバッチリ理解してくれて静かな海域ですばやくエキジット完了!

さすが皆さんトカラチャレンジャーです。

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「湯瀬」到着!

湯瀬の名物  ギンガメアジ K. Yoshimura
何度か大接近


口永良部

湯瀬で潜った後は今日の宿泊地、「口永良部島」に向かいます。

明日のトカラ列島突入前の宿泊といってもお宿など楽しみな島です。

島に着いたらまずはお風呂!

いつもは寝待温泉や湯向温泉などに行くのですが、今日は到着も少し遅かったので港のすぐそばの本村温泉へ。

ここは比較的新しく、施設も整った温泉です。ここで今日の塩と汗を流します。

口永良部島 本村温泉の前で
温泉施設の中

そして、お泊りは「民宿くちのえらぶ」

質素さの良さがあふれる快適なお宿です。

夕暮れの東シナ海を望み、思い思いに時を過ごします。

そして、いつもながらの美味しい夕飯。

ここでしか食べられないスズメダイ系お魚の塩焼き。いつクマノミが出てくるのかちょっぴりドキドキ。

(もっともクマノミを出すとは聞いていません)

海を望むこの場所が抜群に快適です。

遠くに見えるは薩摩硫黄島

オヤビッチャの塩焼き!

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トカラでダイビング

口永良部島を出発して波がありながらもついにトカラ列島にやってきました!

風とうねりの影響で静かな場所は島の西側に限られます。そのあたりにいる分には外海に波があるなんてことが信じられないような静かな海です。

天気も上々、トカラ列島らしいダイナミックな口之島の姿を目前に見ながら準備をします。

トカラダイビング1本目は静かで穏やかな「赤の立神」です。

なだらかなサンゴ根というか丘が続きます。イソバナも多いところです。沖縄あたりでも人気のハナゴンベやフタイロハナゴイなんかもチョロチョロ見えます。ハタタテハゼも当たり前、ゼブラハゼも多いんですね。ちょっとしたトンネルもくぐったりしながらとってもリラックスダイビングでした。

カメ           itami
浮上中       T. Matsui

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口之島の平瀬

相変わらずの南西からの風とうねり。潜れる場所は限られます。

この風向きで口之島の風裏にあたる場所には「口之島の平瀬」と言う場所があります。

口の島の港を出てすぐ、岸からなんか泳いでゆけそうな場所にありながら、潮の流れは速く初夏などにはイソマグロがガンガン並ぶポイントです。

何回か潜っているのですが、最後に潜ったのは数年前。けっこうな激流の中、跳ね返されてしまった苦い思い出のとき以来となります。

今回は当初はこのポイントをフルコースで流してしまうと島陰の静かな海域から出てしまいエキジットが荒れる海域に及んでしまう可能性が大きいことなどから当初潜るポイント候補とはしていなかったのですが、今回のコンディションでは穏やかなまったりのポイントしか潜れない可能性もあり、状況を見るだけでも見てみようと言うことにしてみました。

ここはフルコースでは、最初の岩に取り付いて、その後に数百メートル離れた2番目の岩に流したりするのですが、今回は後半も潮流に乗って流さずに1番目の岩限定ならエキジットも静かな海域でおさまると読みました。

イソマグロの季節はすでに外れていることは承知のうえ、流れも激流じゃないし、ここは行くしかないでしょう、ってその時のコンディション。潮上からいっせいに飛び込みます。

水はやや濁り気味ですが、トカラ列島ダイビング独特の緊張感の中の潜降です。

「これこれ!」 楽しいこの感覚。

大きな根の下に潜りこむとギンガメアジの群れが走っているのが見えます。

その後何度もギンガメアジの大群を見ながら場所を移します。

後半、浅い根頭でチッソ抜きをしようかというときに巨大イソマグロが数匹登場。

潮もまずまずあったので何度も何度も根頭の浅いあたりにつかまる我々の近くまでやってきてくれたり。迫力満点でした!!

その後はみんなで予定通り浮上、荒れる海域に流れる前までにエキジット完了。

皆さん、バッチリでしたよ!

トカラらしいポイント、ギンガメアジの群れ、でっかいイソマグロの雄姿。そしてトカラダイビングの緊張感ありながらの楽しさを今回もちょっとだけでしたがしっかり味わうことが出来ました。

半分くらいのコースとは言え、前回この場所にやっつけられたときのお返しも完了!?

平瀬のギンガメアジ群れ   T. Matsui

平瀬の岩の上で

2匹でスリスリしていた でっかいイソマグロ
なんども目の前を通ってくれました。

itami

静かなエリアで浮上 写真は水中モード? itami


中之島

口之島のダイビングを終えて今日の宿泊拠点である中之島に移動しました。

明日は臥蛇島の予定。この風向きならトカラ列島のシンボル的な場所である「臥蛇の立神岩」も可能かも。

明日を楽しみにしながら今日のお宿に向かいます。

海游倶楽部 (かいゆうくらぶ)

中之島のお宿は今回ももちろん「海游倶楽部」

中之島の高台にあって途中にはトカラ馬が放牧されている光景も見ることが出来ます。

そして、お楽しみはここの夕食!

まいど同じことを書くようですが、トカラの島でこんな食事が出るなんて。以前(今も?)のトカラ列島では考えられないことですよ!

海游倶楽部の早川さん、Rieさん、毎回お世話になっております!

今回はあわただしい出港となりましたが、また次回、よろしくお願いします!

海游倶楽部の夕食

美味しいイタリアンでした!
お皿も楽しいですね。

余儀なく予定変更

夕方からは私たちも携帯電話で気になる天気予報をチェックします。

「あれれ、次第に良くなるはずの海況が、怪しい??」

低気圧が出来て、それが熱帯低気圧になる予報に変わってきました。

明日の宿泊予定は「平島」。

初めての上陸。ダイビングが楽しい臥蛇島にも近い島で楽しみにしていました。

そして夜も次第に更けてきた頃、船の山梨氏から連絡をもらい宿の早川さんと一緒に港まで行きます。

やはり予報が思わしくなく、「港が小さく入港が難しい平島は断念し、中之島に連泊しましょう」とのこと。

船長の判断です。当然「否」はありません。

「ここ中之島に連泊、天候のことだし、安全第一。それならそれで皆さんOKですよね。明日の夕食は中華かな?それも楽しみだなぁ。」

しかし、さらなる状況の悪化…

低気圧が熱帯低気圧になってついに台風になるらしい。。

もうこうなってはアーもウーも無く「退却」ですね。

翌朝、後ろ髪引かれながら荷物もすべてまとめて宿を引き払い出港です。

臥蛇島も小臥蛇島も良く見えていてそれがやっぱり恨めしい…

「ガジャにコガジャよ、次回は潜り倒してやるからな!」

数限りなくこういう状況をくぐりぬけてきた船長の判断は心強い限りです。

退却前に記念撮影。

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トカラを後にする前に潜って帰りましょう。

朝出港し、中之島、そして口之島の静かな場所で1本ずつ潜ることに。

トカラ列島とは言え、たいがいは潜る場所はある程度ポイントとして潜られてきた場所となります。

でもこういう海況になり潜るポイントも無くなってくると、エントリー場所なんてほとんど関係なくなります。陸上景観や潮の動き具合を見ながら面白そうな場所に飛び込むことも。

いつも言いますが、こういうやり方こそダイビング遊びの原点ですよね。

−この崖の下の海がどんななのか見てみたい−

今回飛び込んだ場所は静かな場所ですが、飛び込むとやっぱりトカラの海が広がっています。

中之島のラクダ岩近くで潜ったときにはエキジットの際には透明度40m超の見事な青い水となりトカラブルーの片鱗をちゃんと見ることが出来ました。

大きくないけど豊富なサンゴ群、ハナダイやハナゴイ。南方系の魚たち。穏やかな場所といいながらちょこちょこ通るイソマグロやバタクーダ、マダラトビエイ、カメ、メジロザメ。もちろんウメイロモドキやテングハギモドキ群れなんかは珍しくもありません。

ウメイロ群れにウメイロモドキが混じります。
タテキンの幼魚2匹。  K. Yoshimura

T. Matsui

テングハギモドキとゴマテングハギ
カメも頭上を通過

ウメイロモドキは群れるとさらにきれいですね。

岩の下にはネムリブカ
なんで赤く写ってしまったか不明

いくつもあるトンネルをくぐったり

itami


薩摩硫黄島

ツアー3日目、中之島と口之島で潜った後は一路「薩摩硫黄島」へ。

トカラ列島から口永良部島、そして薩摩硫黄島にいたる海路。

黒潮の通り道もあったりで見事に時化(シケ:海が荒れること)ています。

刻々と色を変える海ですが真っ青な海と真っ白な波濤。そして荒れ模様ながら空は青空、言ってみれば絶景です。

数時間にも及ぶ退却戦ですが、次第にこの光景に見とれるのでした。

ありがたいことにこの時間でクッタリしてしまったイワシのメンバーは誰もなし。

航海3日目ともなれば船にも波にも慣れたもの。逞しいわがメンバーよ!

見事な波濤と青空。絶景です。

もっとも、船長にとっては「荒れ模様度MAX」からはぜんぜん手前の状態でしょう。

こちらも安心しきって気楽な気分。

休憩中  船長と

海況によって日程変更を余儀なくされた今回のトカラツアー。

予約してあった宿のキャンセル、次の宿の急な予約と嫌な役割と困難な作業を続けてくれたセブンテンスの山梨氏となおみちゃん。この状況の中でも安全で快適なダイビングをさせてくれた船長さんとTさん。本当に感謝です!

そんなわけで、お盆休みに入り、休業しまくりの宿の中かからなんとか予約Getしてもらった「薩摩硫黄島」。

このへんの民宿、夏の盛りに休業とは、、なんと商売っ気の無い(苦笑)

ところで、普通に考えればこの薩摩硫黄島はすっごい僻地の島。でも、ウチではすっかりいつもの島(笑)

ここまで来ると妙に安心してしまいます。


硫黄島の港。 もちろん赤いです。
宿の近くに孔雀がたくさん。

いつもの硫黄島の東温泉
さすがにこの荒れっぷり

九州本土へ

九州のことを本土と言っていいものかわかりませんが、離島から戻るとやっぱり本土って感覚です。

「台風4号」は着々と北上してきます。危険なコース、速度では無いようですが、やはり台風、海は荒れています。

朝、薩摩硫黄島を出港し、鹿児島の薩摩半島に向かいます。

せっかくだし、どこかでダイビングしましょう。

沿岸では魚影No.1とも言える「千貫瀬」も候補にしますが、思いのほかの波で静かな場所でまず1本。

水温も透明度もさすがにトカラとは違うのは仕方ないこと。波がある先端には行けずにまたもや風に我慢を強いられますが、ここまで来て無茶をしても仕方ないですね。

ゆっくりキビナゴ群れに囲まれたり、アラを見たりウミウシを見たり、皆さん思い思いの生物を見ながら潜りました。

そしてもう1ダイブ。

静かになったかに見えた「千貫瀬」に行ってみます。

しかし、今度はキビシイ潮流が…

これではやめておきましょう。

そこからまた北上し野間岬も越えて沈み瀬(隠れ根)の「大瀬で潜ることに。

大瀬って名前シンプルですね。日本全国にいくつあるでしょうね(笑)

さあ、ラストダイブ。鹿児島本土の近くではトカラブルーの海とは行かないだろうけど楽しく潜りましょう!

水深5〜6mの根頭のほぼ真上からいっせいにエントリー。

「おお!!」

青いです。ブルーです! そして根頭はソフトコーラルで見事にカラフル、そして魚がいっぱい!!

タカサゴ群れが岩の上を流れ、キビナゴ大群が大瀬を覆います。

言いたかないけど、今回のトカラにぜんぜん引けをとらない素晴らしい青さ。

大きくないけどツムブリやムロアジの群れ、目の前で壁になったり我々を囲むトルネードになったのイサキ超大群。

水深30m近くでも素晴らしい水です。

ここ「大瀬」は過去何回か潜ったこともあるし、素晴らしいポイントだとは知っていましたが、今回ここまでの状態とは思っていませんでした。

透明度、魚影、雰囲気、どれも文句なしでした!

風や波、そして台風に翻弄された今回のトカラ列島チャレンジでしたがラストダイブは思った以上の素晴らしい海でした。

根はソフトコーラルと魚で覆われていました。
タカサゴ大群がいつまでも流れます

キビナゴ大群とダイバー

イサキの壁壁!
イサキのトルネード!!

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itami
itami


最後のお泊り

変更しながらの今回のツアー。

最後のお泊りは鹿児島本土の野間岬にある「笠沙恵比寿」。

笠沙の港に面しているのですが、とってもきれいな施設です。

トカラ列島を船で巡ってきた私たちが海から上陸するとまったくもって難民状態(笑)

みなさん海が見える大浴場で、帰途の船上でさんざん被った塩を落とし、とってもサッパリしたようでした。

宿泊施設「笠沙恵比寿」 ここに上陸しました。

施設内
すごく綺麗な施設でした。

「笠沙恵比寿」での朝食。 おっしゃれ〜!


最終日は観光

今回のツアーの最終日は朝荷物のパッキング、宅配便で発送して観光経由で空港に向け出発です。

例年なら最終日まで海の上にいるのでこんなにきれいな状態でパッキングできるトカラツアーも珍しいですね(笑)

毎年おなじみの送迎のバスの運転手さん。今回は観光もお願いしました。

行った先は「知覧の特攻平和会館」と桜島を望む「仙厳園」

特攻平和会館では若くして死んでいった特攻隊隊員の手紙に涙し、仙厳園という江戸時代の島津のお殿様の別邸の広さや見事さ、そしてバッチリ見えた桜島も見事でした。

ところで、驚いたのは中国からの観光客の多さ。8割は中国人だったような感じです。

中国からフェリーが来ているとか何とか。テレビで見る中国の元気よさを実感ですね。

知覧の特攻平和会館

桜島も見事な全景が見えました。
殿様の別邸、仙厳園を歩きます。


思えば、1日早く帰港したこと、出港地の串木野ではなく枕崎に帰港したこともありました。

言ってみれば、これがトカラ列島クルーズ」です。

予定のツアーコースをそのまんま消化するようなツアーではないのは明らか。

海だって最近では一年で最も凪の確率の高い季節を狙って開催しているとは言え、相手は自然、そのときになって見なければわかりません。 昨年、一昨年はものすごい凪に恵まれましたね。

旅としてトカラクルーズはやっぱり断然面白いと思います。

でも

「どんなすごい大物が見れるの?」

「宿はホテル?綺麗? 島にお土産物屋やコンビニくらいはあるでしょ?」

雑誌の広告を見れば他にいくらでもそんな希望をかなえてくれる行き先はありますよね。

雑誌やネットで出てくる流行の場所や生物をたどるのが楽しみ、それ以外なにがあるの? と言う方もどうぞそちらへ。

でも一度お試しいただきたいな、こんな旅やダイビングの楽しみ方。

ツアーとして、ダイビングポイントとしての難しさは確かに立ちはだかります。

ダイビングだってそれなりのスキルと約束事は必要です。(と言っても必要なスキルさえ覚えれば100本以下のダイビング経験だって可能。)

だいたいいまどき夏の盛りにダイバーにほとんど会わないダイビングツアーってめったにないですよね、これだけ素晴らしい野生の海域でありながら。

日本でも最後の秘境であることは間違いありません。

だからこそ行きたくなるのでしょう。

こんな場所へのこんな旅、誰もが行くような旅とは充実感がずいぶん違う気がします。

台風4号の発生で途中で大きな変更をせざるを得なかった今回のツアーですが、なんとかトカラの島に上陸し、海にも飛び込むことができました。(たしかに行きたい島や海の宿題はいくつも残りましたが…)

もっとも、変更後の行き先もなかなかのものでしたよね。

結局みなさん笑顔で楽しい旅でした!

「旅は出るもの」実にそう思います。

今回も無事にツアーを終えることが出来たのは参加メンバーの皆様、そして船長さんたち??さん、セブンテンスのおふたりのおかげです。

本当にありがとうございました!!

トカラ列島の魅力を知るメンバーの方、この先もトカラの島々と海を味わいに行きましょうね。

私たちが目指さなくてはこのトカラチャレンジがすたれちゃう、くらいの気持ちで!

またトカラの海を目指しましょうね!!

おわり

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iwashi-d@divers.ne.jp