H.Kentaroの写真 「こだわりの伊豆」

Vol.4

「ナイトはキライ」


西伊豆 土肥 通り崎湾内にて

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 ナイトダイビングはキライである。内緒の話だが僕はコワガリなので暗闇は苦手である。潜る直前になっても「やめとけばよかったかな」と迷ってしまう。そんなにキライならやめればいいのになぜか潜ってしまう。カメラのせいである。カメラを持っていなければきっと潜らないだろう。写真を撮りたいという気持ちがすべての事に優先するようだ。当たり前だが夜の海は暗い。海中ではライトで照らしている範囲だけが丸く浮かび上がってくる。ライトの円の外は真っ暗である。ドキドキである。暗闇から何か飛び出してきそうだ。神経が張り詰めちょっとした事に反応してしまう。闇が人間の感覚を鋭くさせるのだろう。ミミイカを見つけた。体長は約2cm。一人前に墨を吐く。かわいいのである。発光バクテリアがきらめき、怪しい雰囲気である。イイ感じだ。もう大コーフンである。
こうなると夜も昼も関係なく夢中になる。シャッターを押している時は暗闇が全然気にならない。
我ながら単純な性格である。

ところが思わぬ落とし穴があった。ライティングだ。ありあわせの機材で潜ったのでミミイカにうまく光が当たらないのである。ライトをガムテープでハウジングのアームに固定していたのである。

しかたなくガムテープをはがしてライトを手に持つ。ミミイカを照らすことはできるが今度はカメラの操作がうまくいかない。ああ手がもっとほしい。心の底からタコがうらやましいと思った。8本あれば自由自在である。なぜ人間は手が2本しかないのであろうか。せめてあと2本は追加してもらいたい。つまらないことを水中で考えてしまった。

ミミイカと格闘を初めてから50分が経った。ミミイカはいい迷惑だったろう。すまなかったと思う。悪戦苦闘したがそれでも2台のカメラで30枚は撮影した。これだけ苦労して撮影してもいいと思える写真は2、3枚あればいいほうである。あとはゴミ箱直行となる。ちょっと心が痛む。この写真はその時撮影した中の1枚である。
アマモの草原にひそむミミイカである。

○ミミイカ
○撮影日時  1997年5月24日(土)
○撮影場所  西伊豆 土肥通り崎湾内 -5m
○撮影者   細田健太郎
○撮影機材  ネクサスF90+60mm YS50+YS20
○撮影データ 1/60 f11 RVP


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iwashi-d@divers.ne.jp