トカラ列島 悪石島 旅行記

2002年10月21日〜28日

トカラ列島の地図。フェリー待合室にあった絵を撮ったものです。ちなみにトカラの「カ」は漢字で変換ができませんでした。

前編

ひょんなことから急遽行くことになったトカラ列島にある悪石島。この恐ろしげな名前の島は屋久島の下から奄美大島の上にかけて点在する島々のほぼ真ん中あたりにある島である。これまでに数回トカラ列島ダイブクルーズで訪れているがあまりのアクセスの悪さと荒々しい自然に拒まれ気軽に行けるところではない。

しかし出発の数日前に以前トカラクルーズでお世話になった船が工事のため悪石島にいると聞きNAUIの先輩インストラクターと「行っちゃおうか!」なんて軽〜い気持ちで決めたのであった。ちょっと作業の手伝いをすればあいた時間に悪石島の海を遊んで回れるだろうなんて計画だったのだが...


000 フェリーとしま丸は鹿児島港を夜に出て各島に寄りながら翌日10時半にやっと悪石島に着く。

行く先は奄美大島と宝島の便がある。週約2便の運行。トカラ列島(十島村)には飛行機の便は無い。

えっ?

どうも海況がイマイチだななんて思いながらやっと悪石島に上陸すると出迎え?に来ていた親方が「海も時化だし暇にしてても仕方ないので手伝って行けば?」。そのあたりに異存はない。宿に行くと作業ズボンを渡される。そして軽トラの荷台に乗せられ島の東にある牧場へ。荷積みなどをちょろっと手伝う。そんなペースで一日が終わったがこの島の民宿(上の集落に2〜3件)はいくつかの工事の関係者でいっぱいだ。どうも離島というのは工事が多いようだ。

翌朝、宿替えのため(と思って)荷物を持って出てゆくとどうも自分達を待っているふうで軽トラのまわりにいるのは作業員たち。「えっ?」 訳もわからず荷物をほっぽりだし水着だけを握って軽トラに積み込まれる。歯磨きもトイレもしていない間に軽トラで港へ。

今回の工事は荒波に切断されてしまった電話海底ケーブルの修理または交換作業。前日までにNTTの1万トンという電話ケーブル敷設船が来て陸から海に続くケーブルが入れられていた。ダイバーの作業はそのケーブルの補強とルート修正である。このケーブルは数日前の時化で破損してしまい、島ではしばらく電話が不通になっていたとのこと。

もっともこうした事態は数年ごとにあるらしい。ケーブルが引かれている海岸は大きなゴロタ石の海岸で台風の時には数トンもある石が吹っ飛ぶらしい。そりゃケーブルもこわれるわな...


00波打ち際は波がケーブルを破損させる。それを防ぐためケーブルにゴム管を巻き、半分に割ってある防護用の鋳物の鉄管(写真の手前)で覆う。その鋳鉄管は1個8キロ(一組16キロ)ある。それを4ヶ所をボルトでとめる。

水中では岩に叩き割られた鋳鉄管が転がっていた。なんと自然の力のすごいことよ。


000 まず、ケーブルの上をなるべく岸寄りまで船を近づけ合図とともに一気に鉄管を投げ込む。しかし、浅瀬もあり船が近づけるのも限界がある。ばら撒かれた鋳鉄管はあとはダイバーが手で運ぶ。フィンははかず歩きやすいようにウエイトはたくさん着ける。一組16キロ、または2つで計30キロ以上をぶら下げ浅瀬にひたすら運ぶ。しかし浅瀬はうねり、足場の石は滑る。何度うねりで飛ばされたことか。足の上に鉄管を落としたり転んだ拍子に体に当たったらかなり痛い、というか怪我をする。息はゼイゼイ、きつい作業だ。水はさすがにすごい透明度なんだけどなぁ。。


手前にすでに付けた鉄管が。さて次だ!

しかし、波が来るとこうなって

波にのまれてみんな白い波の中です。
000

翌日は沖から(船から)の作業ではなく陸上から防護用の鋳鉄管をつける作業となった。波はあいかわらずある。波が来ないところからつけ始め可能な限り水の中まで付けてゆく。装備はマスクとウエイトのみ。

このときの海況は言ってみれば大瀬崎の外海やIOPの潜水禁止状態か。体はほとんどもてあそばれハンパに岩に足で体を固定しようものなら足を折りかねない。足だけ固定し体は飛ばされるからだ。そんななかボルトで鋳鉄管をくっつけて行く。

大きな波が来るたびにみんな束になってゴロゴロ転がされる。マスクはズレズレ、一気に波打ち際まで打ち上げられてしまう。そしてまたむくっと起きて沖に向かって這ってゆく。みんな頭と言わず腰と言わず岩に打ち付けられ痛いトコだらけ。しかしこの状態、心の中でつい笑ってしまう。つまりヤケクソ状態。。

鉄管をはめる人、ボルトをしめる人、鉄管、ボルトを届ける人と役割があるのだがみんなひっくり返ったりしているのですぐ順番が入れ替わったり。波で真っ白になった中では10センチ先すら見えない。手に持った小さなボルトなど小さな穴に入れそこない、いくつ落としたことか。前半はハンパ人足ながら最前線でがんばったが途中で岸近くまで転がされタッチ交代、中継の支援部隊に。(そこでも転がされるんだけど)

終わってからはみんなでこれだけ水にもまれたら体がキレイになったかもね、なんて話していた。


 
その翌日は再び船からと言うことで大波をこえて現場に向かったがうねりが大きくNTTからの現場監督から中止の指示が。もう何でもいいやと行く気になっていたがそれでもやっぱりホッ。あとは陸上での作業に。

 


水中の作業はこんなトコ。あとは幸か不幸(あ、まずい、不幸といっておかなきゃ!)か海況が良くならず。陸上作業になった。そんななか約半日だけ親方の気遣いで(他のダイバーは陸上作業をしていた)遊びの潜りをさせてもらった。なにぶん海は荒れていたので風の通らない限られた場所でしか潜れなかったが水底が生き生きしているところや水の良さなどトカラの海の素晴らしさを垣間見ることができた。

そのあたりのことや島のことなど後編にということで。

つづく

後編へ

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