イワシダイバーズツアー

八丈の南、小笠原の北

Dynamic Crusing Tour

八丈島と小笠原の間に点在する豆南諸島。昔からダイバーたちの憧れの地である。八丈島からひたすら南下して2日目に鳥島、3日目にやっとソーフ岩の姿を見ることができる。しかし、途中に避難できる島も無い為に 天候が悪ければ八丈から出港出来ない可能性もある。行ける可能性があるのは梅雨明け直後から台風シーズンまでの短い期間、そこしかないのである。計画の立て難さと海の厳しさによって ほとんどレギュラーのツアーとしては行くことは不可能と思われていた。今回、(約1年前)この島々までダイバーを連れていってもらえる船があると聞き これまで胸の中にひそめていたこの島々への想いが一気に実現へと動き出した。


航海図

ツアー日程 :1998年7月2日〜8日

7/2 14:45 八丈島 八重根港発
7/3 09:00 鳥島着 鳥島にて3ダイブ
7/4

02:20 鳥島発

07:00 ソーフ岩着

ソーフ岩にて3ダイブ
7/5 15:00 ソーフ岩発 ソーフ岩にて2ダイブ
7/6

07:00 スミス島着

15:15 スミス島発

15:30 ベヨネーズ列岩着

19:00 ベヨネーズ列岩発

スミス島にて2ダイブ
7/7

05:00 八丈小島着

07:30 八丈小島発

08:00 八丈島八重根港着

八丈小島にて1ダイブ


鳥 島

昼過ぎに八丈島を出港してまだ慣れない船中の夜を越し、翌朝に遠くにとり鳥島が見えた時はとても不思議な感じがした。アホウドリとジョン万次郎の漂流地として有名なこの島はなんと遠いことか。海の色はまさに藍色。鳥島は赤茶けた地肌に背の低い草が覆う。期待のダイビング、エントリーしたとたんに約1.5mバラクーダに出会う。島のまわりにはバンドウイルカが住着いており、船に伴走して我々を楽しませてくれた。


孀婦岩 (ソーフ岩)

孀婦岩

孀婦岩の亀裂のキビレマツカサ

最初にソーフ岩の存在を知ったのは何年前だったろうか。雑誌かなにかの写真で見たこの高さ99メートルのソーフ岩はあまりにもショッキングだった。その下の海中はどうなっているのだろう、いや、一目この大海原にそびえたつ岩の塔を見れるだけでもいいと思っていた。実際にこの岩の下まで来てみるとまったくその期待を裏切らないものだった。

しかも、水中はメジロザメ、イソマグロたちがハタタテダイやアカヒメジの群れの中で野生味たっぷりの姿を見せてくれた。本当に節操が無いくらい魚が濃いのである。ところで、ここのサメたちは他で見るもの等とは比べ物にならない怖さであった。平気で人に近づいて来る。「ソーフのサメはヤバイ!」こんな噂が思い出された。

もっとソーフの写真


須美寿島(スミス島)

須美寿島
スミス島では2ダイブしたがそのどちらもそれぞれに素晴らしいスポットであった。憧れのソーフ岩の後で多少気が抜けた部分もあった。船長兼ガイドのカズさんによるとスミスの海がこれまた素晴らしいとのことである。1本目のスミス島の北側は深いBLUEが非常にきれいなドロップオフ。2メートルクラスのイソマグロの群れが目前を行ったり来たり。2本目の白根はかなり沖合いの隠れ根。ここには水中温泉が涌いているがなにより深い海底から立ち上がった白っぽい根に凄い数の魚(カンパチ、ゴマテングハギモドキ、ユウゼンなどなど)が群れている。ここに潜るのにはかなりの緊張を感じたがこの不思議な場所もとても印象深い。
白根


船上の生活

船は14トンの漁船造り。いい海に行く為とは言え、決して楽な生活ではないかもしれない。最初の数日間は半数近くのメンバーが船酔いに苦しめられたようだ。しかし、素晴らしい自然に触れるにつけ彼らの表情は変わっていったように見えた。陸上のホテルのようにはいかないが 心づくしの料理や海の話など この船上生活においてそれこそが最上の演出のようにさえ思えてきた。ついに6日間 、一度も陸上には立たなかった。それでも皆が又来たいと言っていた。それが、この航海の価値を物語っている。

この海に潜るために

このツアー計画はほぼ10ヶ月前にスタートした。やはり心配だったのは船上生活とならんで皆が安全に潜れるだろうかということであった。メンバーにとってこのような海でのダイビング(海)をイメージすることはほとんど不可能に近く、私たちはひたすらエントリーから集合までと浮上方法のイメージが体に入る方法を考え、伝えることに専心した。これまで 私はダイブクルーズといえばトカラ列島などの引率を経験してきたが今回の海はよりダイバーが潜っていない海なのである。こちらのスタッフは3名。うち2名はパラオ、与那国でのガイド経験を持つ。しかし、この手強い海に9名のメンバーを安全にそして楽しく潜ってもらうには大変な緊張感を強いられた。その海ごとに潜り方は違うことが多い。しかし、大切なことは同じであるはずだ。エントリー際、移動際、浮上際。皆が同じイメージで動けるかどうかがポイントとなる。(サッカーでも戦術の浸透が勝利の鍵とか言っていたが)もちろんダイビング中はそれぞれの楽しみ方があるが。そこに行くまでが要注意なのである。 結論を言えばメンバー達は私たちが驚く位に海とダイビングスタイルに順応していった。しかし、同じ戦術(?)でダイビングしながらも それぞれ違った感想を語っていた。気持ちはひとつ、目的もひとつ、しかし、楽しみはたくさん。それこそがダイビングの醍醐味だろう。ここの海がをそんな当たり前のことをを強烈に教えてくれた。

ソーフの海

ソーフの海は凄かった。もちろん、鳥島やスミスもすごかったがソーフには正直たまげた。まず、何といってもメジロザメがかなり生意気だった。 ソーフの2日目、2ダイブを終え、私たち3人のスタッフだけで潜ることになった。それまでと違う点は人数が少ないということである。岩の下に通り抜けられる穴がある。その穴から外海を見ると手の届きそうなところに100キロ級のイソマグロがガンガン通るのが見れる穴から出てしましまわなければずっとその光景を味わえる。そのまわりにはカッポレ、ツムブリ、ギンガメアジなどが邪魔なくらいに群れている。その中にメジロザメも混じっている。しかも、パラオあたりで普通見れる奴よりも数段 大きい。私は色気を出して岩ずたいに沖の方へ移動して行った。あたりにはそれらの大物(そういう言い方は好きではないが)の他にもアカヒメジの群れ、ツノダシ、アオヤガラなどこの状況にふさわしいとは思えない魚達までぐっちゃりいる。ふと 沖に目をやると見渡す限りにサメの姿が見える。こちらの人数が少ない為に寄ってきたのだろうか。私たちは岩から離れてそちらの方へ浮上しなければならない。きっと、泳いで行けば散っていくものと半分タカをくくっていた。しかし、そのうちの一匹がまっすぐ尾鰭を振りながら向かってくる。うちのスタッフいわく 「アイツ 目がいっちゃってたョ」 かなりしつこく向かってきたあと、深みへと去って行った。ここのサメはほとんど人間を見たことが無いだろう。ソーフのサメは違うとつくづく感じたのであった。そんなソーフの海でした。


■ イタミの八丈島〜ソーフ岩航海日記

iwashi-d@divers.ne.jp